世界観
まず世界観からですが、作中で次のように語られています。
つまり、ドラゴンが車や飛行機のようなインフラになった社会という世界感のようです。
車の代わりにドラゴンが荷物を運び、飛行機の代わりにドラゴンが空を飛び、戦争では重火器の代わりにドラゴンが火を噴く。そんな世界観です。
これはなかなか良いですね。
ただ、最強で孤高の存在として描かれるドラゴンが好きな人にとっては、家畜になってしまったドラゴンに価値はない・・・などという見方もあると思います。
この辺は少し好みが分かれるところでしょうか。私は好きです。
あらすじ
タイトルからも分かる通り、追放テンプレの作品です。
主人公は「ドラゴンと言葉を交わす特殊能力」を持っており、そのおかげで竜騎士として評価され、Sランクギルドに入りますが、音楽性のドラゴン運用の考え方の違いで反発しクビになります。
なんと1ヵ月でクビです。
ギルド最速記録かもしれません。
ただ、これについては、追放側が批判される点は無いように思います。
薄利多売の会社に入社して、高コストになる提案ばかりを行って上司・会社に疎まれたってことですからね。商売のスタイルが違うだけです。
生物ですのでモノとはちょっと違うでしょうが。
絵の雰囲気は良い
絵がとてもいいですね。
表紙などはこのような感じなのですが、私は大変好みであります。カラー上手いですねぇ。
本編もこのような手書き背景になっており、昨今の流行りの写真加工や3D背景を使っていません。
トーンなども全く使用していないようで、作品の雰囲気に味が出ていて良いです。
話の粗が気になる
掴みはバッチリなのですが、話がだんだんと微妙になっていきます。
いえ、話というよりは設定がブレはじめるというのでしょうか。
どうにも違和感が発生していきます。
例えば、クビになった後の行動として町の役所(要するにハローワーク)に行くわけですが、コネも何もないからハローワークに行くという風に書いています。
ただ、この主人公、元々は優れた竜騎士として評価されてSランクギルドにスカウトされた設定のはずです。私は「君、1ヵ月前まで何やってたの?」というツッコミをしたくなりました。
完全なゼロスタートを切っている理由がよく分かりません。
他にも、主人公はドラゴンの調教の仕事を請け負うわけですが、なぜかドラゴン側の問題を解決して終了となります。思わず「いや、調教の仕事は?」と突っ込んでしまいました。
あとは、タイトルは「S級ギルド」だけど作中では「Sランクギルド」になっていたりします。
これらは細かい点ではあるのですが、設定がブレているように感じるので私は気になりました。
原作の三木なずな氏の評判を調べてみると、どうやら複数の作品を並行して連載していくタイプの作家さんのため、同時並行の弊害で設定のブレが発生しやすい作家さんだと言われているようです。
要するに100%の作品を1作出すのではなく、70%の作品を10作出すタイプの作家さんということのようです。
総評
絵が良いだけに勿体ない作品だなという感想です。
ただ、つまらないというほどの作品ではありません。
私のように小さな粗が気になる読者にとっては、その点が気になって素直に読めないような作品ではありました。
面白いんだけどちょっと物足りない。そんな感じです。
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